専門家が伝える ケースで学ぶメンタルヘルス対策 第2回

専門家が伝える ケースで学ぶメンタルヘルス対策第2回

ケース
 小沢は私立保育園に勤務する、33歳の女性保育士である。
 勤続11年目となる今年4月、前任者が退職したために、主任保育士に抜擢された。
 小沢はこれまでの自分の仕事が認められたように感じ、行事の企画・運営、保育士の指導・教育や勤務シフト管理、保護者対応、園長のサポートなど、多岐にわたる業務に張り切って取り組んでいた。全体の状況を把握するためにクラスを担任することはなかったが、必要な時には、子供への対応も変わらず行っていた。
ある時、保育士が1人欠勤したので小沢はサポートのため現場に入りたかったが、処理しなければならない事務作業が大量にあり、そちらを優先せざるを得なかった。その日、勤続年数が一番長い森野保育士が、「こんなに忙しいのに、主任は現場に来ない。現場のことを全く分かっていない」と話していたと耳に入ってきた。小沢は、「周囲は主任の仕事の大変さを分かってくれていないんだ」と感じた。
その頃から、小沢は主任の立場の孤独さを感じるようになった。ふとした時に森野保育士の言葉が脳裏によみがえり、なんとなく以前ほどモチベーションが上がらず、仕事中も、やることが山積みなのに頭が上手く働かない。
「大好きな子供と関わる時間も少なくなったし、役職のない保育士の方が良かったのかも…」と小沢はぼんやりと考えていた。
留意すべきポイント
○ストレスを感じると、生産性が下がる場合がある。周囲は小沢主任のストレスに気付けていたか。
○職場の人間関係はどうであったか。情報共有をしやすい雰囲気があったかどうか。
社労士からのコメント
丸田 和賀子 (まるた わかこ)先生 丸田 和賀子 (まるた わかこ)先生
丸田社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士
 日本能率協会総合研究所と産業医大ソリューションズの2009年の調査によると、「仕事に集中していないと感じる時間は勤務時間全体の何%ですか」という質問に対し、3分の1以上の人が、「10%以上集中できていない時間がある」と回答しています。また、会社生活や仕事上で強いストレスや不安を感じるほど、仕事に集中しないという結果も出ています。
 メンタルヘルス不調による遅刻や欠勤のために生産性が下がるというのは理解しやすい面がありますが、きちんと出勤していても、ストレスを感じているだけで生産性が下がっている可能性があるのです。
 人がストレスを感じる要因はいくつかありますが、その一つに、環境の変化があります。昇進や結婚など、よいこと、おめでたいことのように見えることでも、環境が変わるということ自体がストレスになり得ます。特に昇進の場合は、業務量が多くなったり、仕事の質が変わったりすることが多いので、ストレスマネジメントに注意が必要です。
 また、仕事のストレスを緩和する要因としては、「仕事の分担・役割を明確にする」「上司や同僚とコミュニケーションを取りやすくする」などがあります。
 ミーティングの場などを活用して、お互いがどんな仕事をしているのかよく話し合い、理解し合うことは働きやすく、生産性の高い職場づくりに役立つでしょう。
医療職からのコメント
茅嶋 康太郎 (かやしま こうたろう)先生 茅嶋 康太郎 (かやしま こうたろう)先生
株式会社ボーディ・ヘルスケアサポート 取締役
医師
 このケースは、保育士としてのプレーヤーであった小沢さんが、管理職に抜擢されることにより、マネージャーとしての役割を求められるようになり、順調にこなしていたものの、あるきっかけが原因となり、モチベーションの低下、生産性の低下というストレス反応を起こしたものと思われます。
 プレーヤーとマネージャーの「二足の草鞋を履く」ことは、なかなか容易なことではありません。このケースの場合、小沢さんを孤立させたままにすることなく、主任に抜擢した上司(たぶん園長)が、小沢さんに仕事を任せっきりにすることなく、業務のこなし具合をよく観察しながら、相談にのり、支援を行うと良いと思います。
 しかし、上司も日頃の職場の中で小沢さんの変化に気づかない場合も多いです。小沢さんの方からも、このようなことがあり悩むことがあれば、上司(園長)に相談してみるという姿勢を持てるようにするといいですね。
 「コミュニケーションによる情報共有」、そもそも「コミュニケーションを取りやすい職場環境(人間関係)づくり」、大事なキーワードです。
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