専門家が伝えるメンタルヘルス対策「もっと聞きたいメンタルヘルス」上級編

 「いまさら聞けないメンタルヘルス」の入門編・初級編・中級編に続く新コンテンツ、専門家が伝えるメンタルヘルス対策〈上級編〉『もっと聞きたいメンタルヘルス』がスタートいたします。

 メンタルヘルスケア・健康経営に取り組んではいるものの効果が上がらない、うまく取り組めていないなどの実務的な問題や課題解決に向けて、社会保険労務士・産業医・大学教授・中小企業診断士などの専門家がそれぞれの立場からアドバイスいたします。

 毎月10日(予定)に計9回のシリーズで掲載します。

第1回

メンタルヘルス対応マニュアルを作成しましょう

本山恭子 先生
執筆 : 本山 恭子(もとやま きょうこ)先生
本山社会保険労務士事務所 代表
特定社会保険労務士、産業カウンセラー

1. マニュアルはありますか?

 会社の中には、従業員のメンタル不調者対応経験は数回あるけれど、マニュアルや復帰プログラムなどは作成していないところもあると思います。決まりがない中、困っていませんか。

 例えば、労務担当者が知ったときには、ある従業員が既に何日も欠勤していたが上司などからは何も報告がなかった。または、休職中の従業員が既に復帰していることが分かったなど。

 このようなことはどうして起こるのでしょうか。対応ルールがないこと、あるいは、ルールがあっても周知徹底されていないことが、様々な要因の中の1つにあるのではないかと思います。

2. マニュアルはいつ作るか?

 私は、メンタル不調者対応経験がまったく無いという事業場には、多少でも経験してからの作成をご提案しています。ひな形を参考にしたみよう見まねのマニュアル作成は、その後の実務対応のときに、実態になじまなくて使えないこともあり得るためです。

 しかし、いつまでも流れだけに任せていては、経験値が蓄積されませんし、同じ失敗を繰り返してしまうかもしれません。休職者によって対応が変わるリスクもはらみますから、数例経験した段階でのマニュアル作成をお勧めします。マニュアル作成により、対応事項等が明確になることに加え、必要に応じて改訂してより良いものにすることも可能ですし、担当替えの場合でもそれまでの経験値が残ります。

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3. 2種類のマニュアル

 マニュアルも大きく分けて2つあるのではないかと思います。
1つは職場復帰に関するマニュアル。厚労省が示しているいわゆる「職場復帰プログラム」です。

 もう1つは、不調等の申出方法や相談方法、それ以降の対応マニュアルです。こちらは、厚労省から具体的な手引きは出ていませんが、その必要性については認識されています。 (「メンタルヘルス教育研修担当者養成研修テキスト P28」こころの耳 HP より)

 1つ目の職場復帰マニュアルは、職場復帰支援の流れとして、厚生労働省が出している「改訂 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」の図が示すように(図1)、第5ステップまでの道のりが示されています。それぞれのステップは図のとおりです。今までの実務対応では、このステップに沿って行っていたでしょうか。どのようなことがうまくいき、どのようなことで反省したでしょうか。

心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き

 手引きには実行すべき事項の記載はありますが、どのように誰が実行するのか具体的なことまでは書かれていません。各事業所において、事情を検討し、これまでの経験を活かして、自分たちで決定します。決めるときのポイントは「具体的」に「分かりやすく」です。

 手例を挙げますと、以下のような事項を決めて周知することで、担当者は勿論、休職する方の不安の低減にも役立つと思います。

休職の申出方法
誰に、何を提出するのか。提出された診断書はどう扱かわれ、誰が知ることとなり、保管場所はどこか。
休職中の決まり
休職する場合の決まりについて誰がいつ、誰に説明するのか。内容として休職期間、休職中の傷病手当金支給申請の手順・頻度、連絡方法・事項・頻度、連絡担当者、復職の申出の手順・申出先、復職申出必要書類の提出期限など。
復職のための準備
復復職可能基準の判断基準、そのための準備事項、復職の判断のための実施事項、復職のための面談の実施時期・面談者、確認事項。

 産業医にいつ、どこでどのような形で関わってもらうのかも、あらかじめ決めておく必要があります。
そのためにも産業医にも作成時にアドバイスを貰いましょう。医師の視点もとても重要です。

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 2つ目は日常的メンタルヘルス対応マニュアルで、「具体的」な流れ、「関わる人」を示すものです。
事案によって、必要な措置は違うかもしれませんが、相談の流れや窓口は定めることが可能です。

例えば次のようなものです。

相談体制
相談窓口は誰か。上司なのか、人事労務担当なのか、複数用意されていて従業員が選択できるのか、あるいは相談窓口は1本なのか。相談申出手段は何か。
相談後の対応
相談を受けた担当は必要に応じて次にどのような人に報告、相談するのか。プライバシーはどうなるのか。
上司が取る対応
部下が休み始めた、具合が悪いと相談された、診断書の提出先が上司の場合にその後どうするのか。

 ルール作成には、従業員の方の労働条件や退職など重要事項も含むため、場合によっては労働基準法や裁判例などからも検討する必要もあるでしょう。そのときには、産業保健総合支援センターや社労士等の外部の専門家のアドバイスを貰うことも有益です。

4. 周知徹底

 作成したら周知徹底をお願いします。せっかく作ったものも、従業員に示されなければ、何もないのと同じようなものです。適切な情報が伝達され従業員の支援に繋げるために、マニュアルを作成したら、従業員説明会を定期的に開催するなどして、従業員に周知していきましょう。

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